2026年10月27日
来館の思い出を、持ち帰れるかたちに。
坂の上の雲ミュージアムの新しいグッズづくり
坂の上の雲ミュージアムにて。館内業務リーダー 友近千里様(左)と、統括責任者 近藤正純様(右)。
商品開発や新事業の立ち上げなどの際、作りたいもののイメージはあるものの、
「どこに相談すればいいのかわからない」
「このアイデアは実現可能なものだろうか」
「そもそも何から手をつければいいかわからない」
といったお悩みに直面されたことはないでしょうか。
制作物によっては、デザイン、印刷、加工、製造など、さまざまな工程があり、それらを進めるためにはゼロから調べたり、製作できる外注先を探したりと、想像以上に時間と労力が必要とされるもの。坂の上の雲ミュージアムでも、同じような課題をお持ちでした。
坂の上の雲ミュージアムについて
産経新聞夕刊に連載された小説『坂の上の雲』全1,296回の記事を展示した「新聞の壁」。
安藤忠雄氏が設計した坂の上の雲ミュージアムの「空中階段」。
1. グッズ刷新と相談のきっかけ
――新しいミュージアムグッズを企画されたきっかけを教えてください。
近藤様「私たちは2020年より指定管理者として当館の管理運営にあたらせていただいているのですが、新グッズの相談をしたのは、ちょうど「こども本の森 松山」がオープンするタイミングでした。今後、子どもや若い世代の来館が増えていくことが十分に予想される一方、ミュージアムグッズは2007年の開館以来、ずっとほぼ同じラインナップでした。このまま現状の商品ラインナップだけでは、若い方々にご満足いただけないのではないか、という声がスタッフ全体から挙がるようになったことが新しいグッズを検討することになったきっかけでした」
2025年にオープンした「こども本の森 松山」の室内。
友近様「新しいミュージアムグッズについては実際に販売に関わるスタッフだけでなく、さまざまな立場のスタッフから意見がありましたので、総出で検討しました。観光地に出かけた際に、どのような商品が選ばれているのかを調べたり、家族や子どものために買うなら何が欲しいかを考えたり、スタッフ同士でアイデアを出し合ってグッズのイメージを固めていきました」
――そんななかで弊社にグッズ製作のご相談をいただいた経緯を教えていただけますか。
友近様「もともとハラプレックスさんとはパンフレットの印刷を依頼している関係でやり取りがありましたので、相談しやすいという安心感があったんです。当館の背景も把握いただいていましたので、こちらの要望についても相談に乗っていただけるのではないかと。何社さんかお声がけさせていただいたのですが、ハラプレックスさんは担当者の方が本当にすぐ駆けつけてくださり、そのスピード感に驚かされたことが強く印象に残っています」
近藤様「実はハラプレックスさんからは『うちは印刷以外にもいろいろなことに対応しているんですよ』というお話を以前から伺っていたんです。ただ、その時点では依頼できるような案件がなく、正直そこまで意識していませんでした。それが今回改めて相談させていただくと、数多くの事例やご提案をいただき、本当にいろんなことができることを知りました。既製品から選ぶだけではなく、私たちがつくりたいものを一緒に形にしていただけそうだと感じたことが、依頼させていただく大きな要因になりました」
新しいグッズづくりのきっかけや、制作当時のことを振り返る近藤様と友近様。窓の向こうには萬翠荘を望むことができます。
2. アイデアを、実際の商品へ
――グッズを検討していく中で、印象に残っていることはありますか。
近藤様「アイデアは数多く出てきていたんですが、どう実現させるかという課題がありました。そこで『こういうグッズは作れますか』とハラプレックスさんに相談すると、実現するための方法を考えてくださるだけでなく、『こういう商品もありますよ』と、こちらが知らなかった選択肢も提案してくださったり、最近のトレンドや製作コストについても情報をいただけるのでとても助かりました。例えばミュージアムの建物の特徴を表現した三角形の鉛筆や消しゴムなども検討していたんですが、製作条件が限られるため想定以上にコストがかかることなど、私たちにはわからない業界の動きや事情についても伺えたので、商品選定するうえで非常に参考になりました」
商品選定や製作条件について振り返る近藤様。
友近様
「現在販売している『ぷにぷに缶バッジ』も表面をやわらかいぷにぷにした素材にしたいとお願いしたところ出来上がったグッズのひとつです。最初に見たときは、いったいどのくらい反響があるのか不安もありました。でも、いざ完成して販売してみると、お土産として選んでくださる方も多く、やわらかな質感もあって、小さなお子様にも親しんでいただける人気商品になりました。
あと人気があるのは『ツバメノート』ですね。以前からスタッフの要望があったもので、ハラプレックスさんでは取り扱いがなかったそうなんですが、製作できるルートを開拓してくださり、商品化することができました。
通常取り扱っていない商品であっても、どうすれば形にできるのかを考えていただけたのがとてもありがたかったです」
商品化までの経緯や、完成したグッズについて話す友近様。
3. 手描きの原画を商品へ展開
――今回のグッズ展開のベースになったのがキャラクターの新たなイラストでした。
近藤様
「新しいグッズを製作するにあたって、まずは関係各所との調整をしながら、以前からあった秋山好古、秋山真之、正岡子規の3人のキャラクターをデザインされた作家の方に新グッズ用のイラストを描き下ろしてもらったんです。さらに今回は、新たに正岡子規の妹・律のキャラクターも加えていただきました。これらのイラストはとても好評で、グッズのイメージが膨らむきっかけにもなりました。ただ、グッズ展開するにあたっては、手描きの原画をベクターデータ化する必要があります。
当初は、原画をデータ化する作業は別の会社にお願いして、そのデータをグッズの製作会社へお渡しし、製作していただく流れを想定していました。
ところがハラプレックスさんに相談したところ、社内のデザイナーさんが対応してくださるとのことだったので、そのまま商品化まで相談できたことは大変助かりました」
友近様
「水彩のような濃淡のある手描きのイラストでしたので、データにした際に雰囲気が変わらないかという心配もありましたが、元のイラストの印象を忠実に再現していただけました。それにグッズ展開に必要な原画にはなかった後ろ姿もデザイナーさんに描いていただき、作家さんにも承認をいただいた上で仕上げることができました。
製作にあたってはそれぞれのグッズに合わせてイラストを微調整していったのですが、キャラクターの目や眉の位置、文字の間隔、ロゴの大きさなど、本当に細かなところまで何度も修正をお願いして、完成までに30回以上やり取りを重ねたこともありました。1ミリ程度の違いであっても、小さな商品になったときには印象が変わってしまいます。『もう少し上に』『ここは少し間隔を空けて』といったお願いのほか、スペースが小さくて読めないかもしれないけれどキャラクターの名前を入れてほしい、といった細かな要望にも快く対応していただいて、最終的に納得できる形に仕上げていただきました」
キャラクターグッズのデザイン資料。目や眉の位置、文字の間隔、ロゴの大きさなど、細部まで調整を重ねました。
――なかには途中で大きく仕様を変更されるケースもあったそうですね。
友近様「ミニチャームのことですね。当初はチャーム付きボールペンとして検討していて、ボールペンの種類まで選定していたんです。ある程度、アイデアが固まりつつある終盤になってボールペンじゃなくてもいいのではという意見があり、メインで考えていたボールペンをなくして、チャームだけにしようと大きく軌道修正いたしました。紆余曲折ありましたが、結果的によく手に取っていただける人気商品ができました」
左側はキーホルダー、右側はチャーム付きボールペンから仕様を変更して商品化されたミニチャーム。
4. 数量調整から品質管理まで
――数量の調整や品質管理についての弊社の対応はいかがでしたか。
近藤様「ラインナップにはある程度の幅を持たせたかったのですが、在庫リスクもできるだけ避けたかったんです。そこで商品ごとのコストやロットについて具体的に説明していただくことで、売れ行きを想定しながらバランス良く発注させていただくことができました」
友近様「特にキャラクターによって売れ行きに差がありますから、全部の種類を同じ数量で製作すると、どうしても在庫に偏りが出る可能性があります。それに対しても、全体の合計数が同じであれば種類ごとの数量は変えても大丈夫とのことで、アソートで対応してくださって本当に助かりました」
近藤様「あとは商品が完成してからも、ショップで陳列する際に『これは吊るして見せたい』『こちらは並べて置きたい』という要望がスタッフから出てきたんですが、それに対してもヘッダー付きのPP袋といった販売用の副資材を手配していただきました」
完成したグッズが並ぶミュージアムショップ。商品に合わせて陳列方法も工夫されています。
友近様「一番感心しているのは、不良品がないことです。お客様からのクレームも1件もありません。アクリル商品などは、端が尖っていたり、部品が外れてしまったりすることを心配していましたが、そうしたこともありませんでした。小さなお子様にも手に取っていただく商品ですので、安全面も含め、安心して販売できる品質であることはとても大切だと感じています」
5. 新しいグッズの反響と、これから
――実際に完成した商品をご覧になった感想はいかがでしたか。
友近様「本当に期待していた通りの、かわいらしい商品に仕上がっていました。こちらからお願いした細かな部分もきれいに反映されていました。スタッフは商品の内容や価格についてもかなり率直に意見を出すのですが、今回のグッズについては『かわいいね』『お客様に喜んでもらえるといいね』という声が多く、安心しました」
近藤様「若い世代の来館が増えることを見込んで準備を始めましたが、実際にご家族や若い方のグループ、子ども連れのお客様が大きく増えました。結果として、新しい来館者を迎える前に商品を準備することができて本当に良かったと思っています」
友近様「来館者のなかには、小説『坂の上の雲』をよく知る方だけでなく、安藤忠雄氏の建築や「こども本の森 松山」をきっかけに訪れてくださる方もいます。小説やドラマを詳しく知らない方でも、キャラクターを入り口として親しんでいただき、お土産や来館の記念として選んでいただけるようになりました。学校で『坂の上の雲』を学んで来館する子どもたちのなかには、キャラクターグッズを一式購入してくださるお子様もいるくらいです」
坂の上の雲ミュージアムのミュージアムショップ。来館の記念となるさまざまな商品が並びます。
――グッズ製作を弊社とご一緒させていただいて、メリットに感じていただけた部分はあるでしょうか。
近藤様「当初は、原画のデータ化はデザイン会社、ノートは文具を扱う会社、その他のグッズはそれぞれの製作会社というように、私たちが一つひとつ手配することを想定していたのですが、ハラプレックスさんに、それらを一つの窓口で取りまとめて進めていただけたことは、大変ありがたかったです」
友近様「何より、対応の早さが印象に残っています。商品化について相談してから、事例や提案をいただくまでがとにかく早かったです。おかげさまでデザインや修正についても次々とやり取りを進めることができました。細かな要望も一つずつ聞いていただけたので、出来上がりを待つ間も、不安というより、早く販売したいという気持ちでワクワクしていました」
――最後に、今後の展望を聞かせていただけますか。
友近様「せっかく正岡子規の妹・律のキャラクターもできましたので、今後はその特徴を生かした商品も考えていきたいと思っています。例えば、律にちなんだ裁縫ポーチのような女性向けの商品も面白いと思います。お客様からも『トートバッグやTシャツはないんですか』といった声をいただいていますので、そうした要望にも応えていきたいですね」
近藤様「私たちが大切にしているのは、この施設を訪れたお客様にご満足いただき、喜んでいただくことです。お客様の満足度を追求するなかで、まだ足りていないものがあれば、それを補える商品やサービスをこれからも提供していきたいと考えています」
